京都・みなみ会館で上映されていた時に観に行けず、かと言ってこれは今後DVDでも出るかな~? 出せるのかな~? と悔やんでそのことをTwitterでつぶやいたらスタッフさんアカウントから「立誠シネマでも上映予定」とのリプをいただき、リベンジの日をどきどきしながら待っていたこの映画。
木屋町DARUMA
タイトルからしてくっそヤバいです。
※人によっては拒否感の方が先にくると思われます。記事内のYouTube動画にはくれぐれもお気をつけください。
『木屋町DARUMA』あらすじ
四肢をなくした元ヤクザが、這いつくばるように生きていた―――。
あまりに過激な内容がタブー視され、大手出版社が軒並み刊行を拒んだ丸野裕行の発禁小説を完全映画化。
かつて木屋町の闇組織を束ねていた勝浦茂雄(遠藤憲一)は5年前の事件で両手両足を失い、現在は弟分の古澤(木村祐一)から世話役を命じられた坂本(三浦誠己)の助けを借りながら、借金の取り立て屋として暮らしていた。
そんな勝浦のもとに、とある家族への取り立ての仕事が舞い込む。
その家は、金と麻薬を持ち逃げし、責任を負った勝浦が今の姿となるに至った原因を作った元部下・サトシの女の家だった。
取立て中、女からとある物を渡された坂本は、5年前の事件に疑念を抱くようになる―。
京都の歓楽街・木屋町の裏社会を舞台に、借金により人生を壊されていく人々、裏社会の人々の生き様を描きだす。
【公式サイト】
kiyamachi-daruma.com
私がこの映画を観たいと思ったわけ
監督が榊英雄さん!
低予算映画ながらアクションがくっそアツい厨二映画。榊さんは「全てを知る不死身の男、ヤクザのリーダー」で出演。
いろんなものが限られているからこそ出てくる面白さ、かっこよさを知り、いわゆるB級映画にハマったのは全てこいつのせい。
もちろん『ALIVE』も観た。
スーパー戦隊シリーズ 特命戦隊ゴーバスターズ VOL.1【DVD】
- 発売日: 2012/07/21
- メディア: DVD
私の中ではこの2つのイメージの強い榊さん。
『捨てがたき人々』で映画監督としての顔も知り、また別の映画も観てみたいと常々思っていたのでした。
主演が遠藤憲一さん!
ヤクザもの映画で、主演がエンケンさんとくればこれはもう観たい!
エンケンさんのヤクザもの、観た数はごくごく少ないのですが一度観たらあの渋カッコよさは忘れられないですよ。
DARUMAでも、随所に「在りし日の勝っちゃん」の姿が映し出されるんですが、古澤が「あの頃の勝っちゃんは凄かった・・・凄過ぎたんや」と言うのも納得の、包容力溢れるカッコよさ。
そういうシーンがあって、さらに四肢のない姿の凄みが増しています。
グッときたシーン
勝浦の“カラダを張った”取立てシーン
最初の取立てシーンは新井(寺島進)家。
勝浦の浴衣がはだけて露わになった素のカラダを見て、愕然とする新井家の人々―そして私たち観客。
それだけでも強烈なインパクトなのに、怒鳴るわ、娘(武田梨奈)の股ぐら胸元に首突っ込むわ、転がってうんこ漏らすわ、怖すぎてちょっと笑っちゃいました。
人ってね、怖すぎると逆にその状況がおかしくなっちゃう時ありますよね。
サトシの女の家では、人間的にしょーもない父親が逆上してゴルフクラブで勝浦をブチ殴るんですが「もっとキョーレツなん入れんかい!」と挑発する勝浦。
「お前みたいなんはガラクタや・・・」
カタギの世界からはそう見られる裏社会の中で、手足を失いひとりでは何もすることが叶わない、シモの世話さえも他人に任せる身となってもなお生きていく勝浦は、自分自身にもきっとこの言葉を何度も何度も数え切れないくらい投げつけてきたはず。
だからこそ、キョーレツなモノを相手に投げかける。
相手からのも受け止める。
それが勝浦の渡世。
「カタぁ、つけに行きましょう」
ネタバレになります。
ラストへ向けて、勝浦を抱えて古澤の元に車を走らせる坂本。
このシーンの前には全てのことに嫌気が差し、虚しさに泥酔した坂本が勝浦の元に転がり込んできて「このカラダに、ココロはないんすかぁ?」などとくだを巻いた挙句、ゲロして爆睡という場面があります。
ゲロも溜めてきた想いも、全てを吐いたあとの坂本の男らしさがよかったです。
車に乗り込んでからの高揚感。
男二人のあの“バディ感”―これよ、映画は! わくわくしました。
この一件で深いところで結びついた二人のね、その後。
最後がまた素晴らしかった。
素晴らしいなんて言って、まぁ、死んじゃうわけなんですが、1回目の危機をかわした二人から匂いたつ男同士の空気。
ああ、言葉に表しきれない!
その直後にくる衝撃、二波目。
ああ、そうくるかー。
でも、そうだよね。
世界ってそんなに優しくないよね。
だから、この二人で死ねてよかった。
良かったのか?
人が死んでいいはずはないのだけれど、私は今後、木屋町、高瀬川のほとりを歩くたびに勝っちゃんと坂本の二人を思い出すことになるだろう。
「これでなかったことや」
坂本が古澤に差し出したとあるモノをもしゃもしゃ食べて飲み込んで、口を開ける勝浦。
その時の「っぽ!」という音が、あの緊迫した場の中でとても場違いで、とても哀しい。
勝浦の強さは、すべてを赦すことができる強さだ。
帰り道に江戸川乱歩の『芋虫』を思い出しました。
見終わって外に出てきたら、木屋町
今回、私が観に行ったのはこの映画となった木屋町にある立誠シネマです。
小さな小さなスクリーンで、「上映会」という雰囲気で映画を楽しめる場所。
イスにはふかふかのおざぶクッションが使われているので疲れません。
そんな小さな、ちょっと映画好きの心をくすぐる空間から出てきたら目の前に広がる木屋町の風景。
ロケが行われた土地で、その映画が観れるというのはそれだけで嬉しいものですね。
木屋町、そんなに馴染みもない場所ですけど。
12月6日(日)には舞台挨拶あるそうです!
risseicinema.com
確実に、目を逸らしたくなる映画です。
でも、こういう世界も、実際にある。
この冬いちばんの衝撃作でした。
こちらのインタビューも面白かったです。
www.excite.co.jp
www.excite.co.jp