博多座二月花形歌舞伎 やっぱり四代目が好きっ!

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2月25日昼夜通しで博多座二月花形歌舞伎公演を観てきました。
24日の夜行バスで京都を出発(会社から一旦帰宅する時間がなかったので、会社近くの銭湯でひとっ風呂からのバス乗車)。

昼の部は『男の花道』と『艶姿澤瀉祭(はですがたおもだかまつり)』の二本立て。

男の花道

本当に見事なタイトル。
真っ直ぐな信念を持つ男同士の厚い友情の物語です。

主人公となる二人の人物、眼科医・土生玄碩と歌舞伎役者・歌右衛門は実在の人物がモデルとなっているそうで、原点といえる講談のタイトルは『名医と名優』、その後『誓いの花道』として撮影されるはずだった映画が撮影入り直前に『男の花道』と変更になりました。

文化5年、大阪・道頓堀では歌右衛門の芝居が大当たり。
しかし、この時芝居を観ていたオランダ医・土生玄碩は芝居の所作から歌右衛門は目が見えていないのでは? と察知します。
初の江戸下りを前に次第に目が見えなくなってくる歌右衛門は絶望のあまり宿の井戸に身を投げて死のうとまで思い詰めます。
それを引き留めたのが同じ宿に泊まっていた玄碩。
死ぬまで覚悟したのであれば自分に身を任せ眼科手術を受けて欲しいと申し出た。
果たして、歌右衛門の目は完治し、二人の間に厚い友情が生まれます。
4年後、名実共に名優となった歌右衛門は舞台の最中に玄碩の危急を知り・・・


2015年の明治座で一度観たことのあるこのお芝居。
歌右衛門はもちろん猿之助さん。 
玄碩は前回、市川中車(香川照之)さんだったところ、今回はワンピース歌舞伎で猿之助さん演じるルフィの義兄弟・エースを演じた平岳大さんが。
中車さんも、玄碩の頑固で不器用な性格をまじめに故におかしみがにじみ出るような心で演じられていて私は好きでしたが、平さんの玄碩はそこに大分色っぽさが加わったように思いました。
Twitterでの感想を斜め読みすると、女形の猿之助さんとの体格差も大きいので、男同士ではあるもののうっかり違う関係に見てしまいそうになったりという方もいたようです。
私は、男同士の関係の中でも「ブロマンス」の方だろうなと。
ブロマンス…友情のためにお互いに強く相手のことを思うこと、強い精神的な繋がり、親密なプラトニックな関係というような意味合いがあるんですが…ともかく、濃密な男同士の繋がりを観るのが嫌いな女はいません! (キリッ


この他にも見どころは

・歌右衛門の登場シーン(湯上がり姿での登場!)湯気が見えそうな程にしっぽりと潤う肌感に目眩がしそう!
・手術後、包帯で目を覆ったままでの三味線演奏
・包帯を取り、目が見えるようになったとわかった瞬間の晴れやかな表情(見守っていた周囲の人間の表情だけでなく、光景までもが歌右衛門に照らされて明るくなったようでした)
・劇中劇『櫓のお七』の人形振り(かつては人形浄瑠璃で演じられていた演目が歌舞伎となり、さらに歌舞伎の演目の中で役者が人形の振りを真似るという芸能の歴史の流れも面白いですよね。お七は先に歌舞伎で元になった作品があり浄瑠璃になったり、また歌舞伎に取り入れられたりという流れがあったようです。しかし、猿之助さんは本当にお人形のようでした。肉体の芸の極地!)
・『櫓のお七』の姿で客席へ向かっての談判


そして、歌右衛門は玄碩の危機を救うために舞台を抜け出して駆けだしていくのでした。
猿之助さん版では黒地に松の素敵な衣裳に着替えていかれますが、坂田藤十郎さん版はお七の衣裳のままで駆けつけるのだとか。
その方が「リアル」という点では納得もいくし、なにより歌右衛門が寸の間も惜しんで駆けていったということがわかるのでそちらの演出でも観てみたい気がします。


さて、もうひとりの私の大好きな役者さん、坂東巳之助さん(みっくん)は歌右衛門一門のお弟子さん・歌五郎役。
上方役者なので大阪弁です。
みっくんはしゃきっとした江戸の空気を纏う役者さんなので、いつもと違う雰囲気が新鮮でした。
でも、なんとなくではありますが拝見しながら「江戸と上方の空気の違いはこういうことか」とおぼろながらに感じられた気もします。
うまくは言えませんが上方は言葉も身にまとう空気も「まろやか」なんだなぁと。
私自身も元々は関東の出身で違いを偉そうに言える程、長く関西にいるわけではありません。
ただ、和のお稽古事を通じてバリバリ生粋の京都人の先生方と過ごさせていただいていますのでそれを思い返して比べてみると「ああ、違うなあ」と感じたわけです。(もちろん、京都と大阪ではまた空気は全然違います! そこはアッピールしときまー)


艶姿澤瀉祭 市川猿之助宙乗り相勤め申し候

まずはワンピース歌舞伎で青雉(クザン)を演じられた市瀬 秀和さんの居合斬りと剣舞(第一景 光)から始まる約50分間のお祭り!
今回、市瀬さん大活躍でしたね!
『男の花道』では幕開きに木戸番として登場、『雪之丞変化』でも雪之丞一座の役者さんのひとりとしていくつものお役を兼ねてます。
猿之助さんの若い俳優さんをどんどん抜擢・起用される姿勢、大好きです。

さて、この演目は始まったらもう止まらない怒涛の舞踊メドレーです。


第二景 翔(みっくんの龍神と中村隼人さんの鬼神の踊り。能装束風の衣裳って好き)


第三景 賑(役者さんが芸者姿で勢揃いの「祝いめでた」、寿猿さんの渋み溢れる「黒田節」、猿之助さん・みっくん・隼人さんの「深川マンボ」。ここの一連の流れは見てきて本当に気分が高揚して良かったなぁ。あと、Twitterで#艶姿澤瀉祭を検索するとテレビ放映された時の短い動画が出てくるので見て! マンボでの「ああ、踊りの人だなぁ」としみじみ思わせられるみっくんのあの重心の低さ、素敵)


第四景 艶(中村米吉さんのお染、中村梅丸さんの手習子、笑三郎さんのお三輪、笑也さんの屋敷娘…ともうどこを見ていいのかわからなくなるスーパー女形勢揃いタイムなんですが、最後に娘の顔した女帝・猿之助さん(藤娘)登場でノックアウトされる贅沢極まった場)


第五景 炎(話題騒然、平さんのフラメンコもといヒラメンコタイム。平さんの体格の良さよ。いちどフラメンコの舞台も拝見したいです!)


第六景 夢(出雲阿国と山三を中心にした役者総出の群舞で締め。ここで猿之助さんがワンピース歌舞伎でマルコ(尾上右近さん)がされてた逆宙乗りで登場。3階席から花道に降りてきます。山三のかつらはやや茶髪なんですが猿之助さんのそんな扮装もちょっと新鮮でした)


宝塚のレビューや大衆演劇の舞踊ショーのように「きれーい!」「かっこいいー!」「楽しーい!」と素直にわっしょいわっしょい楽しめた『艶姿澤瀉祭』、本当に今回観ることができて良かったです。
私はこういうの大好き!



夜の部は『雪之丞変化(ゆきのじょうへんげ)市川猿之助早替り並びに宙乗り相勤め申し候』。

主人公・中村雪之丞は上方の人気役者。
この度、初の江戸下り。
江戸でもたちまち人気役者に。
しかし、その胸には15年前、長崎奉行と悪徳商人の画策で廻船問屋の父親が濡れ衣をきせられ自害、母も殺されてしまったという悲しい過去が秘められています。
復讐を誓い剣の修行を積みながら、人気役者の道をも進む雪之丞の前に、ついに仇の土部三斎や広海屋らが現れ・・・。
劇中には雪之丞と三斎の娘・浪路との恋あり、その一方で女スリお初の切ない恋もあり、義賊・闇太郎(猿之助さんが二役演じられるのも見どころ)の活躍ありの大活劇。

私自身、これまでに花組芝居さんのお芝居、長谷川一夫さんの映画といくつかの雪之丞作品、そして原作も読んできたので、お話の筋はわかっちゃいるけど面白い作品というのは何度観ても面白いものです。


2015年に観た時よりもまた一段と楽しくなっていました。
女形・立役の二役に加えて二幕境内での大立ち回りで超絶早替りで客席を賑わす猿之助さんは言わずもがな「スター」。
スター芝居である『雪之丞変化』の芯。
そして芯を囲む俳優陣の厚さと安心感。
特に、お初をされた中村米吉さんが良かったなぁと思います。
前回のお初は私の中では新鮮味の方が大きかった。
今回は、意気がって伝法な口をききながらも雪之丞に焦がれてしまう女の部分を切ない表情と仕草で見せてくださいました。
雪之丞に捻りあげられた腕が持った熱い疼きを思いだし、自身もまた熱くなってしまう…ちょっと官能さすら見えました見えましたギャー///


最後に…今回はしっかりと門倉平馬演じるみっくんを観ることができて本当に良かった。
(前回の記憶は平助さんに持っていかれてしまっていて)
雪之丞とは違う執念に突き動かされて生きている平馬。
なんとも男臭いお役で好きなんです。
最後の「先生ーーーーー!!!」の叫びに平馬のこれまでとこれからが詰まっていました。



前に観た時よりも面白くなっている、それを当たり前のように提供してくださる猿之助一座って何なの?
だから四代目が大好きです!


お芝居がハネてからはフォロワーさんと飲み語り♥
(いつもありがとうございます!)
ホテルからチェックイン確認の電話がかかってきていたことにも気づかず日が変わりそうになっていました。
本当に楽しい遠征でした◎

ちなみに今回食べたお店は天下の焼鳥 信秀本店さん。
博多座のすぐ近くなので役者さんもよく来られるそうですよ。
店長さんがとってもフレンドリーで楽しいです!
(斜め向かいのカウンターで手品を披露してくださってました笑)
r.gnavi.co.jp




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shiba-fu.hatenablog.com

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雪之丞変化

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小説 長谷川一夫―男の花道 (上)

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